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札幌高等裁判所 昭和31年(ヌ)311号 判決

控訴人 マツダ施設工業株式会社

右代表者 由居一夫

右代理人弁護士 野切賢一

被控訴人 東宝実業株式会社

右代表者 刈田収蔵

磯西修二

右代理人弁護士 斎藤敏之

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、原判決を取り消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

被控訴人の主張。

一、請求原因

訴外秋島建設株式会社は昭和三〇年八月八日金額十万三百円、満期昭和三〇年一二月一〇日、支払地振出地とも札幌市、支払場所株式会社協和銀行札幌支店なる約束手形一通を、控訴会社(昭和三一年三月二八日商号変更前は由居電機株式会社なる商号を使用)宛に振出交付し、控訴会社は昭和三〇年八月一〇日支払拒絶証書の作成を免除の上右手形を被控訴人に裏書譲渡し、被控訴人はその後右手形を訴外東芝鋼管株式会社に裏書譲渡し、同訴外会社は昭和三〇年一二月一〇日右手形を訴外日本勧業銀行に取立委任裏書をなし、同銀行は満期に支払場所に右手形を呈示して支払を求めたが拒絶されたので、同銀行から右東芝鋼管を経て被控訴人に順次戻裏書を受け、被控訴人は現に右手形の所持人である。よつて裏書人である控訴人に対し本件約束手形金十万三百円およびこれに対する満期後である昭和三〇年一二月一一日から完済にいたるまで手形法所定の年六分の率による法定利息の支払を求める。

二、抗弁に対する答弁。

抗弁中(1)の事実は認めるが、(2)の主張は争う。

控訴人の主張。

一、請求原因に対する答弁。

請求原因事実はすべて認める。

二、抗弁。

(1)  東京地方裁判所は昭和三〇年一二月二日会社更生法第三九条により本件約束手形の振出人である訴外秋島建設株式会社に対し、同会社はその使用人との雇傭関係に基ずき生じた債務を除き昭和三〇年一二月二日までの原因に基ずいて生じた一切の金銭債務の弁済をしてはならない旨の保全処分決定をした。

(2)  右決定の存するかぎり本件手形の所持人は手形法第四三条により遡求権を行使することができない。

理由

被控訴人主張の請求原因事実はすべて当事者間に争がない。

よつて控訴人の抗弁について判断する。

東京地方裁判所が会社更生法第三九条により本件約束手形の振出人である訴外秋島建設株式会社に対し、昭和三〇年一二月二日までの原因に基ずいて生じた金銭債務の弁済を禁止する旨の保全処分決定をなしたことは争がない。控訴人は右決定の存するかぎり本件手形の所持人は手形法第四三条により遡求権を行使することができないと主張する。しかしながら会社更生法第三九条により約束手形の振出人に対し金銭債務の弁済を禁止する旨の保全処分決定があつても該決定には手形所持人が手形法第四三条により遡求権を行うことを阻止する効力はないものといわなければならない。控訴人の右抗弁は採用できない。

そうすれば裏書人である控訴人に対し本件約束手形金十万三百円およびこれに対する満期後である昭和三〇年一二月一一日から完済にいたるまで手形法所定の年六分の率による法定利息の支払を命じた原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 猪股薫 裁判官 臼居直道 立岡安正)

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